半七捕物帳
はんしちとりものちょう
15 鷹のゆくえ
15 たかのゆくえ分量:約50分
書き出し:一老人とわたしと差し向いで、五月の雨のふる日曜日を小半日も語り暮した。時節柄で亀戸《かめいど》の藤の噂が出た。藤の花から藤娘の話をよび出して、それから大津絵の話に転じて、更に鷹匠《たかじょう》のはなしに移る。その話を順々に運んでいては長くなるから、前置きはいっさい略して、単に本文だけを紹介することにした。安政六年の十月、半七があさ湯にはいっていると、子分の一人があわただしく迎えに来た。「親分。八丁...