伊藤左千夫
天神川-竪川-横川が 溢れてしまう。 家族十名、乳牛二十頭で、濁流の中を避難する。 牛を 線路上を通行させてくれるように 駅員に頼むが 非情にも断られる。 牛飼いを止ることを思う。臨場感あふれると感じた。
伊藤左千夫の水害雑録では、伊藤左千夫は人間の恐怖心は肝っ玉の大きさでなく、無事を案ずる気持ちが大きいほど不安になるので、肝っ玉の大きさでない。人間は何度も水害に遭って、苦難をしいられるが、誰がそれを甘んじてうけいれられようか。伊藤左千夫は人間の心境の本音を忌憚なく言う作家であろう。