青空文庫に収録されている南部修太郎の作品で最も好きな作品。南部自身、16才の時、重篤な腸チブスにかっかて80日弱入院しているので、その時の闘病の経験に基づいているのだろう。若い付き添いの看護の女性に花を病室に持ってくるよう頼んだり、本を 読んでもっらったり、彼女に対する対応がまるで、姉を慕うようで愛らしい。性格のよい繊細で多感な少年の気持が、自分自身が経験した、そして、窓から見る他人の死と対面しているにも関わらず、何度読み返しても新鮮で美しい。
病院というのは、現世と彼岸の間に横たわる三途の川と云われることがあるそうだ。そのことをこの小品はよくあらわしている。