「病院の窓」の感想
病院の窓
びょういんのまど

南部修太郎

分量:約21
書き出し:十七の五月だつた。私は重い膓チブスに罹つて、赤坂の或る病院へ入院した。入院して十日餘りは私はまるで夢中だつた。何か怖ろしい物に追ひ掛けられてゐるやうな、遁げても遁げても遁げきれないやうな苦しさのする長い夢にあがいてゐた氣持——そんな氣持で、私はその十日餘りを過した。その間に腦症を起しかけて醫師が絶望を宣告した事、そして、家中の者が枕元に集まつて豫期された私の死に涙ぐんだ事——そんな事は回復期にはい...
更新日: 2017/10/31
ec538f32331eさんの感想

青空文庫に収録されている南部修太郎の作品で最も好きな作品。南部自身、16才の時、重篤な腸チブスにかっかて80日弱入院しているので、その時の闘病の経験に基づいているのだろう。若い付き添いの看護の女性に花を病室に持ってくるよう頼んだり、本を 読んでもっらったり、彼女に対する対応がまるで、姉を慕うようで愛らしい。性格のよい繊細で多感な少年の気持が、自分自身が経験した、そして、窓から見る他人の死と対面しているにも関わらず、何度読み返しても新鮮で美しい。

更新日: 2015/12/22
b6226aa70d42さんの感想

病院というのは、現世と彼岸の間に横たわる三途の川と云われることがあるそうだ。そのことをこの小品はよくあらわしている。