半七捕物帳
はんしちとりものちょう
41 一つ目小僧
41 ひとつめこぞう分量:約20分
書き出し:一嘉永五年八月のなかばである。四谷伝馬町《よつやてんまちょう》の大通りに小鳥を売っている野島屋の店さきに、草履取りをつれた一人の侍が立った。あしたの晩は十五夜だというので、芒売《すすきう》りを呼び込んで値をつけていた亭主の喜右衛門は、相手が武家とみて丁寧に会釈《えしゃく》した。野島屋はここらでも古い店で、いろいろの美しい小鳥が籠のなかで頻りに囀《さえず》っているのを、侍は眼にもかけないような風で、...