年末の一日
ねんまつのいちにち
初出:「新潮 第二十三年第一号」1926(大正15)年1月1日分量:約8分
書き出し:………僕は何でも雑木の生えた、寂しい崖《がけ》の上を歩いて行った。崖の下はすぐに沼になっていた。その又沼の岸寄りには水鳥が二羽泳いでいた。どちらも薄い苔《こけ》の生えた石の色に近い水鳥だった。僕は格別その水鳥に珍しい感じは持たなかった。が、余り翼などの鮮かに見えるのは無気味だった。————僕はこう言う夢の中からがたがた言う音に目をさました。それは書斎と鍵の手になった座敷の硝子戸《ガラスど》の音らし...