「東京だより」の感想
東京だより
とうきょうだより

太宰治

分量:約7
書き出し:東京は、いま、働く少女で一ぱいです。朝夕、工場の行き帰り、少女たちは二列縦隊に並んで産業戦士の歌を合唱しながら東京の街を行進します。ほとんどもう、男の子と同じ服装をしています。でも、下駄《げた》の鼻緒《はなお》が赤くて、その一点にだけ、女の子の匂《にお》いを残しています。どの子もみんな、同じ様な顔をしています。年の頃さえ、はっきり見当がつきません。全部をおかみに捧げ切ると、人間は、顔の特徴も年恰好...
更新日: 2018/01/18
芦屋のまーちゃんさんの感想

厳粛、崇高な せっぱつまった現実 生来的/運命的ハンディキャップ ここでは身体的なもの その他精神的、病的、経済的など 枚挙にいとまがない それらを「美」の原点と捉える 普遍的/同一的他人と違う者 個性的/独自的変人 しかし、美しさの原因を初見は家柄 の良さと見立てたところが妙である 「私」である主人公も家柄が良いのだろう、しかし、何かしらのハンディキャップを持っているのだろう それは精神的/心体的なものかも知れない 自分と同類の者を美しいと感じるとしたら もし「私」が太宰であるならそう解釈しても面白い

更新日: 2016/10/11
らいんさんの感想

太宰治の作品に貫かれているのは、常に''人間''という視点であろう。 そして人間の本当の美しさ=弱さという日常に埋没している符号を、ほぼ奇蹟的に浮かび上がらせる。 それは戦時下の工場という、人間性の圧し殺された状況下が舞台の本作品でも変わることはない。 太宰の作品を普遍的たらしめている理由がここにある。