最後が思想めいていて、もうノイローゼなのか? 誰に向けて書いているのだ? 星一つでも多いぐらいだ。 三つの指輪という未完作があるが、それかと思って読んで損した。 言っときますよ、違う話ですから。
おとぎ話や昔話を題材に作品を描き続けた芥川。この作品、最後に登場人物たちが舞台をひっくり返す。お話のなかから目覚めまだ見ぬ世界を歩んでいくという登場キャラによる宣言は、作者にとっては物語のなかだから言えたことだったのかも知れない。現実で誰より突出していたからこそ、勝手にその先へは行けないと思って心が折れるのも早かったのだろうし、自分の生を諦めて、物語の登場人物たちに命を託したように見えるのは、佐藤春夫が言うように残念なことであるな。
ト書きはあるが 地の文は 当然ながらない。 「チビ・黒・サンボ」に 見られるような 不快な用語にあふれ 気分は よいものではない。 当時の時代背景を 考慮しても 当惑すると感じた。