雙喜 蜘蛛の子が まるで 蜘蛛の子を 散らすように 大量に 走り去った。その 新生児ともいうべき 蜘蛛を見て 女を 想起したに 違いない。写生文というか 観察文というか 巧者の技を 見せられた感があり 詩味を 堪能した。
日常生活で見落している小さな昆虫たちの世界。そこでは生と死の壮絶な格闘が音もなく繰り広げられている。自然の厳しさと命のリレーの敬虔さに芥川は魅せられている。
人間の話ではない。 蜘蛛の話だ。 【登場生物】は 女蜘蛛 蜂 薔薇 【ロケーション】は 綺麗な薔薇の中 蜘蛛と蜂の殺しあい 【勝者】は 蜘蛛 【そして】 子蜘蛛を産む 【やがて】 親蜘蛛は死ぬ 【人間界】で 子どもを一人産んだ者は他人を一人殺せる、という法律があったらどうだろうか? 【医学界】で 患者を一人助けた医者は他人を一人殺せる、という慣習があったらどうだろうか? 人口爆発問題は解決する? 否、…………他人を一人殺さなければならない、と義務化する必要がある 人を殺す権利があっても義務がなければ実行しないから
何だかんだ母性愛というのは誰しも備えているって言いたいのかな。死に際の母蜘蛛の描写が好き。
女の二面性、毒々しい女と女としては衰えた母の姿。悪の女もいずれは衰える。ただ衰えるよりも母として命を繋いだ姿で死ぬ方が美しい。母として死ぬ蜘蛛の姿を見たあとでは前半の蜂を補食する場面も子を産むための栄養源として求めたようにみえる。 夏の太陽と赤い庚申薔薇が象徴的であり、女の二面性をより際立たせている。雌蜘蛛の時点では太陽は蜘蛛の毒々しさ、生々しさを強調し、母蜘蛛になると太陽の生命力と母蜘蛛の痩せ衰えた姿が対比となる。
惨劇と薔薇の華とのコントラスト。 蜘蛛嫌いには恐怖の描写。
母クモが子クモに食われるのかと思った。その方が「悪」に対するせめてもの「善」だ!