岩野泡鳴
ほとんどの登場人物が何かしら欠陥を抱えており、課題の抜本的な打開を図るでもなく、ただ場当たり的な対応を続けている。 理想や美点などはなく、ただただ人間の卑しさや浅ましさが詰まった話。 それでいて、事実ベースで書かれ、突飛な比喩のない淡々とした文体だからこそ、スムーズに読み進められる。 自然主義に触れたのは初めてだが、同派の特徴が如実に顕れている作品ではないかと感じた。