振動魔
しんどうま
初出:「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号分量:約50分
書き出し:1僕はこれから先《ま》ず、友人|柿丘秋郎《かきおかあきろう》が企てた世にも奇怪きわまる実験について述べようと思う。柿丘秋郎と云ったのでは、読者は一向興味を覚えないだろうと思うが、これは無論、僕が仮りにつけた変名であって、もしもその本名を此処に真正直《ましょうじき》に書きたてるならば、それが余りにも有名な人物なので、読者は吁《あ》ッと驚いてしまうだろう。それにも拘《かかわ》らず、敢えてジャーナリズム...