人間灰
にんげんかい
初出:「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月分量:約44分
書き出し:1赤沢博士の経営する空気工場は海抜一千三百メートルの高原にある右足湖畔《うそくこはん》に建っていた。この空気工場では、三年ほどの間に雇人《やといにん》がつぎつぎに六人も、奇怪なる失踪《しっそう》をした。そして今に至るも、誰一人として帰って来なかった。ずいぶん永いことになるので、多分もう誰も生きていないだろうと云われているが、ここに一つの不思議な噂があった。それは彼の雇人が失踪する日には、必ず強い西...