空中墳墓
くうちゅうふんぼ
初出:「新青年」博文館、1928(昭和3)年10月号分量:約38分
書き出し:ぽっかり、眼が醒《さ》めた。ガチャリ、ガチャリ、ゴーウウウ。四十階急行のエレベーターが昇って来たのだった。「誰か来たナ」まだ半ば夢心地の中に、そう感じた。職業意識のあさましさよ、か。この四五日というものは夜半から暁にかけてまでも活躍をつづけたので身体は綿のごとく疲れていた。それだのに、思ったほどの熟睡もとれず、神経は尖《とが》る一方であった。今も急行エレベーターで昇って来た人間が、果して自分のとこ...