赤耀館事件の真相
せきようかんじけんのしんそう
初出:「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号分量:約78分
書き出し:「赤耀館《せきようかん》事件」と言えば、昨年起った泰山鳴動して鼠一匹といった風の、一見詰らない事件であった。赤耀館に関係ある人々の急死が何か犯罪の糸にあやつられているのではないかと言うので、其筋では二重にも三重にも事件の調査を行ったのであったが、いわゆる証拠不充分の理由をもって、事件は抛棄《ほうき》せられたのであった。東京の諸新聞は、赤耀館事件の第一報道に大きな活字を費したことを後悔しているようだ...