省線電車の射撃手
しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ
初出:「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号分量:約64分
書き出し:1帝都二百万の市民の心臓を、一瞬にして掴《つか》んでしまったという評判のある、この「射撃手《しゃげきしゅ》」事件が、突如《とつじょ》として新聞の三面記事の王座にのぼった其の日のこと、東京××新聞の若手記者|風間八十児《かざまやそじ》君が、此の事件に関係ありと唯今目をつけている五人の人物を歴訪《れきほう》して巧《たく》みに取ってきたメッセージを、その懐中手帳から鳥渡《ちょっと》失敬して並べてみる。*...