三の字旅行会
さんのじりょこうかい
初出:「新青年」1939(昭和14)年1月号分量:約25分
書き出し:一赤帽の伝さんは、もうしばらく前から、その奇妙な婦人の旅客達のことに、気づきはじめていた。伝さんは、東京駅の赤帽であった。東海道線のプラット・ホームを職場にして、毎日、汽車に乗ったり降りたりするお客を相手に、商売をつづけている伝さんのことであるから、いずれはそのことに気がついたとしても不思議はないのであるが、しかし、気がついてはいても伝さんは、まだそのことについて余り深く考えたことはなかった。なん...