半七捕物帳
はんしちとりものちょう
68 二人女房
68 ににんにょうぼう分量:約62分
書き出し:一四月なかばの土曜日の宵である。「どうです。あしたのお天気は……」と、半七老人は訊《き》いた。「ちっと曇っているようです」と、わたしは答えた。「花どきはどうも困ります」と、老人は眉をよせた。「それでもあなた方はお花見にお出かけでしょう」「降りさえしなければ出かけようかと思っています」「どちらへ……」「小金井です」「はあ、小金井……。汽車はずいぶん込むそうですね」「殊にあしたは日曜ですから、思いやら...