「老年」の感想
老年
ろうねん
初出:「新思潮」1914(大正3)年5月

芥川竜之介

分量:約10
書き出し:橋場《はしば》の玉川軒《ぎょくせんけん》と云《い》う茶式料理屋で、一中節《いっちゅうぶし》の順講があった。朝からどんより曇っていたが、午《ひる》ごろにはとうとう雪になって、あかりがつく時分にはもう、庭の松に張ってある雪よけの縄《なわ》がたるむほどつもっていた。けれども、硝子《ガラス》戸と障子《しょうじ》とで、二重にしめきった部屋の中は、火鉢のほてりで、のぼせるくらいあたたかい。人の悪い中洲《なかず...
更新日: 2024/11/16
時間旅行者さんの感想

雪と藪柑子、白猫、灯火の色… なんと美しく表現されたストーリーだろうか 華やかな宴席と対比するように ひとり吟ずる老人の姿 しかし詫びしさはない むしろ生きたいように生きた矜持をもち輝きを放っている なんて粋な… しかもこれが処女作とは

更新日: 2020/11/24
19双之川喜41さんの感想

 十代から酒 二十代には心中沙汰を起こし 問屋の身上を 無くした隠居は 一中節の講の末席に加わり 血潮が逆流し 自室で 白猫を相手に 口説いてみたりする。 最期の 雪はやむ景色もないは 印象的である。