「臨終まで」の感想
臨終まで
りんじゅうまで

梶井久

分量:約13
書き出し:彼は永年病魔と闘いました。何とかしてその病魔を征服しようと努力しました。私も又彼を助けて、共にその病魔を斃そうと勉めましたが、遂に最後の止めを刺されたのであります。本年二月二十六日の事です。何だか身体の具合が平常と違ってきて熱の出る時間も変り、痰も出ず、その上何処となく息苦しいと言いますから、早速かかりつけの医師を迎えました。その時、医師の言われるには、これは心臓嚢炎といって、心臓の外部の嚢に故障...
更新日: 2019/10/28
19双之川喜41さんの感想

 看取りの 手記である。 これほど 沈着 冷静に 介護を経て 大いなる方の下に 旅立つ経過を 克明に記した類書は 少いのではないか。 弟の足音で 彼の京大合格を 予知したのは 凄いと感じた。

更新日: 2015/10/03
a5ac6a3c331fさんの感想

息子である梶井基次郎を 看病し身体的にはもちろん、心の支えになっておられた様子が 飾らないことばで 綴られている。 それまでにも 肉親を何人か結核性の病気で 失っておられる。 生活難の上に 我が子を再び失うかもしれないという毎日は、どんなにか恐れと哀しみが おおきかっただろう。 それでも 感情的な表現でなく 事実を冷静に みつめておられる。 お母さんの本当の 強くしなやかな 精神を感じる。 最期が近づいたころ、基次郎さんが 身体の苦痛を訴えることをやめ、『悟ります』と 母に詫びる場面は 痛々しい。 お母さんは 76歳まで長生されたようで 晩年は幸せだったかなと想いをはせました。