嘉村礒多
故郷に妻子、父妹を棄て、恋人と東京へ駆け落ちした圭一郎。定まらぬ心、落ち着かぬ心情が痛々しい。貧しさや呵責に苛まれながらも生活の基礎を築こうとする2人だが、未来に希望が見えぬまま物語は終わってしまう。悲壮感が作品全体に漂っていた。これが私小説の迫力かと思う。