道祖問答
どうそもんどう
初出:「大阪朝日新聞夕刊」1917(大正6)年1月分量:約8分
書き出し:天王寺《てんのうじ》の別当《べっとう》、道命阿闍梨《どうみょうあざり》は、ひとりそっと床をぬけ出すと、経机《きょうづくえ》の前へにじりよって、その上に乗っている法華経《ほけきょう》八の巻《まき》を灯《あかり》の下に繰りひろげた。切り燈台の火は、花のような丁字《ちょうじ》をむすびながら、明《あかる》く螺鈿《らでん》の経机を照らしている。耳にはいるのは几帳《きちょう》の向うに横になっている和泉式部《い...