三右衛門の罪
さんえもんのつみ
初出:「改造」1924(大正13)年1月分量:約22分
書き出し:文政《ぶんせい》四年の師走《しわす》である。加賀《かが》の宰相《さいしょう》治修《はるなが》の家来《けらい》に知行《ちぎょう》六百|石《こく》の馬廻《うままわ》り役《やく》を勤める細井三右衛門《ほそいさんえもん》と云う侍《さむらい》は相役|衣笠太兵衛《きぬがさたへえ》の次男|数馬《かずま》と云う若者を打ち果《はた》した。それも果し合いをしたのではない。ある夜《よ》の戌《いぬ》の上刻《じょうこく》頃...