読了(2022/03/30 06:23:59) アフターストーリー改変系昔話 あらゆる権力を茶化していくスタイル、嫌いじゃない。 さるかに合戦の協力者はブレが多々あるけど栗じゃなくて卵パターンははじめて見た。
なかなか面白いが、なんともせつない。
さて、悪いのはいったい誰だったのか。 優しい結末の先の、至って当たり前な真実は、優しさに慣れきった読者には少々酷なところがあるようだ。
猿蟹合戦の皮肉な結末。蟹を通しての社会への痛烈な皮肉がおもしろい。さすがの文才。
子供の頃に読んだ「さるかに合戦」のおとぎ話が、本作品を読んで覆されました。 この作品は羅生門と同じテーマだと思いました。芥川龍之介さんの作品には善悪をテーマにしているものが多いのでしょう。 悪を裁くのは法や定められた機関が行うもので、一国民ではない。とも感じました。 ドラマや漫画などで、一般人が警察が捕まえられない悪人を裏で成敗する物語ってよくあって、見てて気持ちがすっきりしたりするけれど、間違ってるのかな?とかいろいろ考えさせられました。 だから、本作品の最後の一文が突き刺さります。 お伽噺のその後という発想が面白いです。Eテレで放送されている「昔話法廷」は、この話からアイディアもらったのかなと思いました。 小説家は女に惚れる以外何もしないと考えていたんですね。そこは笑えました。
非現実のおとぎ話に、法律、政治といいった現実的な視点を入れると滑稽になることを知りました
名作。芥川作品の最高峰と思う。
あの猿蟹合戦の世界の続きを読んでいるみたい。そこには法律、世論、警察がある。その世界で蟹はどうなるのか? 私は蟹であるのかもしれない。
『猿蟹合戦』を、クリティカルリーディングの観点をもって読むとこのような結末になる。古典作品を食材に、全く新しい料理を作り出すのは芥川の得意とする所。 うまい言葉を使った意見文を鵜呑みにしてしまう、というのが私の欠点だ。批判的な読み方ができていない。この年齢になってさえそうなのだから、童話を読む子供の頃にそれができた筈がない。 「語り手の論調に騙されるな」というのが一つのテーマであり、作者からの警告である。面白い作品です。
猿は悪者!と言う世間一般の印象を覆して書いている中に、社会全体への作者の意見やら不満やらを描いていて、当時の社会情勢が伺い知れる。