「忘れえぬ人々」の感想
忘れえぬ人々
わすれえぬひとびと
初出:「国民之友」1898(明治31)年4月

国木田独歩

分量:約28
書き出し:多摩川《たまがわ》の二子《ふたこ》の渡しをわたって少しばかり行くと溝口《みぞのくち》という宿場がある。その中ほどに亀屋《かめや》という旅人宿《はたごや》がある。ちょうど三月の初めのころであった、この日は大空かき曇り北風強く吹いて、さなきだにさびしいこの町が一段と物さびしい陰鬱《いんうつ》な寒そうな光景を呈していた。昨日《きのう》降った雪がまだ残っていて高低定まらぬ茅屋根《わらやね》の南の軒先からは...
更新日: 2024/01/19
8eb05d040692さんの感想

大好きな作品です。情景描写が美しいです。 自分も旅をしてこんな感覚を味わってみたいです

更新日: 2023/06/30
阿波のケンさんさんの感想

著者の言う忘れえぬ人とは上手くは言えないが日々の生活の営みの中で人が発する刹那の表情、声、雰囲気に言い知れぬ感動を受けた人であろうか?もちろん二度と会うことのない人である。誰しもそういう経験はあると思う。

更新日: 2023/06/28
31ac58040fe2さんの感想

読書や勉強が嫌いな私が高校生の頃 教科書で読んで なぜか心に残っている作品。文字を読んでいるだけなのに観えてくる、聞こえてくる、匂ってくる、そんな気がします。 他人にとっては見過ごしてしまうような事が鮮烈な印象を持って記憶に刻まれる経験ってないですか? それはもう客体でなく体内宇宙に存在している自分自身であるように思えて、この作品にはとても共感を覚えます。酷評されている方もいる所が逆に深さを感じます。「忘れえぬ」一冊ですね。

更新日: 2021/03/13
b53e79cfe52cさんの感想

忘れ得ぬ人々の最後の一人が旅の宿屋で夜明けまで、肝胆合い照らすまで話をした相手ではなく殆ど口を聞かなかった無愛想な宿屋の主人とは?それは作者にとってあくまても旅の「風景」でなければなかったのであろうか。

更新日: 2020/09/12
19双之川喜41さんの感想

 忘れても失礼になるような人ではないけど 瞬時に 心証風景に 焼き付けられることは 無いわけではない。 その ゆきずりの人の 印象付けを 永く 心の糧とすることになる。 最後の数行が 実によいと 感じた。

更新日: 2018/05/20
おりゅうざこさんの感想

基本的にはひとり旅の旅人が雑多で私的な感想を書き連ねたもの、といった筋で、面白味や知的ぶりを求めるような文ではないと思う。 ひとり旅、特にローカル線や路線バスを多用する緩やかな旅が好きで、旅の間も極力日記をつけている自分としては、内容というより全体の雰囲気にとても共感を覚えた。旅で見えてくるのは必ずしも景色やグルメばかりではなく、特にひとり旅であれば、その時の心の状態に応じて様々なものが記憶に残る。1人働く漁師の姿に、自分の寂しさを一方的に重ね合わせてみたくなったり、人里で笑う子供たちや家族の姿を目にして、普段は感じないような心からの安堵を感じたりするような経験が自分にもあった。 ラストの「秋山ではなかった」は、きっと『忘れ得ぬ人々』ではなかった、の意味。観光地そのものや、そこで会話を交わした人といったメインの記憶とは別に、何故かは解らないけど不思議と記憶に残ってしまって忘れられないでいる光景、というのがあくまでこの文章の主題。だから秋山は外れるのだと思う。 けれど「秋山ではなかった」という冷たい表現には少しどきりとさせられるニュアンスもある。だから或いは「一見些末なことでも、自らも意図しないような心の奥底に刻まれている景色は何故かいつまでも覚えている一方で、一見深く会話を交わしたような相手でも容易に忘れてしまい得る」という解釈をすべきだろうか。 作者自身があえて「共感できる者を望む」旨を作中でのべている点から見ても、共感できる人が多い文章とは思われない。ただ個人的には深く共感出来た気がする。

更新日: 2017/04/29
4798d837134cさんの感想

何て退屈な話なの。 読んでいて何度か意識が遠のいた。 ものの数分で打ち解けて語り明かした人間よりも、 その佇まいが場の風景にピタリとはまっている様が鮮烈な印象を…いや、やっぱり分っかんねぇわ。 共感も理解も出来なかった。私には多分、高尚すぎた。

更新日: 2015/12/17
0e891017c650さんの感想

人は皆、心の中にそれぞれの原風景を持っているのだろう。そして、それを思い出す時、ただ風景だけを思い出すのではない。その風景の中で共に過ごした人、あるいはその風景を作り出してくれた人。意識しなくとも、何故か、彼の誰かを、同時に思い出してしまう。無論、その誰かを含めて、個々人の礎となる原風景なのだ。忘れうるはずがないのだと思う。

更新日: 2015/12/16
f399740ccaf4さんの感想

最後「おっ」と思うので、解釈を検索してみたら思ったより深かったです。でもそこまで考えなくても、描かれる寂しさを楽しめる作品でした。