親鸞の物語だ。仏を信じる人もそうでない人も又宗派の違う人も一読することをお勧めします。
「お銭なしに、遊ぼうと言うのは虫がよすぎる」 遊女と恋に落ちた僧侶は 煩悶の 土壺(どつぼ)にはまる。 これだけ 考え抜かれた恋もめずらしい。 かつては 高校生の必読の書とされたのも さもありなんと 感じる 。
愛というものと仏法との浸透圧。西なる思想と東なる思想の筏の上で、命というものの腥ささを苦心して表現している作品だと感じた。作家が生きた時代、そして今、善鸞は無数に生きており人間性についての問いは終わらない。テクストとして、またコンテクストとして複眼的にこの戯曲を透視してみる楽しみにもなった作品であった。土壌こそ違え、彼が生存していて佐藤泰志の作品など読んだら、どんな感慨をもつだろう。ロマン・ロランから手紙も届いたと何処かに書いてあったが、海外ではどれほど読まれてるのだろうとも思った。真剣勝負の佳戯曲なり。