青服の男
あおふくのおとこ
初出:「現代」1939(昭和14)年1月分量:約37分
書き出し:奇怪な死人別荘——といっても、二昔《ふたむかし》も以前《まえ》に建てられて、近頃では余り人が住んだらしくない、古めかしい家の中から、一人の百姓女が毬《まり》のように飛出して来た。「た、大へんだア、旦那さまがオッ死《ち》んでるだア」之《これ》が夏なら街路にはもう人の往来《ゆきゝ》もあろうし、こんな叫び声が聞えたら、あすこ、こゝの別荘から忽《たちま》ち多勢の人が飛んで来ようが、今は季節外れの十二月で、...