「水の東京」の感想
水の東京
みずのとうきょう

幸田露伴

分量:約36
書き出し:上野の春の花の賑ひ、王子の秋の紅葉の盛り、陸の東京のおもしろさは説く人多き習ひなれば、今さらおのれは言はでもあらなん。たゞ水の東京に至つては、知るもの言はず、言ふもの知らず、江戸の往時《むかし》より近き頃まで何人《なんびと》もこれを説かぬに似たれば、いで我試みにこれを語らん。さはいへ東京はその地勢河を帯にして海を枕せる都なれば、潮《しお》のさしひきするところ、船の上り下りするところ、一条《すじ》二...
更新日: 2019/08/14
ハルチロさんの感想

漢書文語体に慣れている方には、相当に面白い“水路から観る東京地誌”といえる作品です。現代でも、都内皇居以東を散策すると、本作品に描かれる情景や橋や堀の名跡に出会う。江戸時代、“東京”は『八百八町』と称され、“人”と“物”が盛んに行き来していた。そのため、交通路として“水路”が発達していた。大阪は、『八百八橋』と称される“商業都市”であるが、“東京”も劣らず“水路”と“橋”の都であったことが、この作品から想像される。