「夜明け前」の感想
夜明け前
よあけまえ

02 第一部下

02 だいいちぶげ

島崎藤村

分量:約533
書き出し:第八章一「もう半蔵も王滝《おうたき》から帰りそうなものだぞ。」吉左衛門《きちざえもん》は隠居の身ながら、忰《せがれ》半蔵の留守を心配して、いつものように朝茶をすますとすぐ馬籠《まごめ》本陣の裏二階を降りた。彼の習慣として、ちょっとそこいらを見回りに行くにも質素な平袴《ひらばかま》ぐらいは着けた。それに下男の佐吉が手造りにした藁草履《わらぞうり》をはき、病後はとかく半身の回復もおそかったところから杖...
更新日: 2018/03/25
b9ef941530ccさんの感想

島崎藤村『夜明け前』第一部は、岐阜県妻籠宿の本陣の嫡子で国学者平田篤胤門人の平田鉄胤の門人でもある。江戸時代の封建制下で、宿場の様子を克明に描き、幕末の時代に変化を描いた作品であえる。まるで歴史小説であるが、藤村が明治維新以後、当時の人々が知った幕末の様子を、一介の宿場町の人々の伝聞や予測という形式で幕末の大きな社会の変化を語っている。武家社会が終わり、王政復古、しかも、建武の新政のような天皇の復権だけに終らず、古代天皇のように、武家そのものが弱体化した、新しい時代が到来したことを(夜明け)と呼んでいる。