素戔嗚尊
すさのおのみこと
初出:「大阪毎日新聞 夕刊」1920(大正9)年3月~6月分量:約127分
書き出し:一高天原《たかまがはら》の国も春になった。今は四方《よも》の山々を見渡しても、雪の残っている峰は一つもなかった。牛馬の遊んでいる草原《くさはら》は一面に仄《ほの》かな緑をなすって、その裾《すそ》を流れて行く天《あめ》の安河《やすかわ》の水の光も、いつか何となく人懐《ひとなつか》しい暖みを湛《たた》えているようであった。ましてその河下《かわしも》にある部落には、もう燕《つばくら》も帰って来れば、女た...