炭焼き小屋の少女。少女から女となる戸惑い、心の変化が山の自然と共に描かれている。
滝壺には 学生が滑り落ち 少女もやがて滑落する。 大部分が 寡黙な父と娘なので 地の文は津軽の美しい自然描写が展開し まるで読み手を 森林浴に誘うかのようでもある。解題は 少々むずかしい。反復思考も 楽しみのうちかなと感じた。
すぐにはスワがそのような目に遭ったとは理解できませんでした。鈍感な読者です。
ファンタジーですね。女の子は、悲しみの無い世界に行ったんでしょう。
不思議
東北の山で暮らす人々の、どうしようもない貧しい生活が短い文の中に描きだされている。スワの身に起きたことは、残念ながら現代でも、密室の貧困家庭で繰り返されている。その子供達を受け入れて新たな生を与える滝壷が身近にあればいいのだけれど…
少女から女へなっていくスワ。 裸になって滝壺まで泳いでいく天真爛漫な少女が、思慮深くなり、髪を結うようになり、色香も増していったのだろう。 父親は阿呆で 父親は酒臭い。 疼痛。 重い身体。 夢現の逃走。 滝壺に落ちて死んだ学生の姿。 大蛇になった昔話の男。 スワは父親に犯されたのだろうか。 理解の及ばない「汚ならしい」行為に耐えられず、家ではない何処かへ逃げたかったのだろうか。 後半の夢のように曖昧な描写は、スワの混乱と当惑かと思うと、切ない。
貧しさ、閉塞、疎外感。 そんな環境で育った思春期の少女の、「女としての性の目覚め」と「別世界への憧れ」を抽象的に描いた作品だと思っています。 父親の生き方については疑問をもちつつも、片親でめしを食わせ育ててくれている彼には非常な感謝の気持ちもあるのでしょう。それだけに、親子としての関係を裏切られたときの絶望感は凄絶なものであったに違いありません。 ラストはとても悲しいです。しかし、都の学生を追って別世界へ旅立とうとしたと考えれば、いくらか彼女も救われる気がします。
とても重いテーマを扱った作品ですが、とにかく津軽の山の自然の描写が美しいです。 美しい自然と、主人公の少女の内面を表すような物悲しくやるせない雰囲気の対比がなんとも好きです。太宰の作品の中でも特に好きなものの一つです。