豊かさと引き替えに失われてしまった心境の変化への警鐘でしょうか。生活のなかでの細やかな喜びや感動、謙虚な思いやり、大切にしたいものです。
人生は 時々の舞台装置の上で 演技を重ねていくような ものとも 見れる。 ある程度の譲歩や折り合いは 仕方がないのだろう。 無論 糞純粋主義もありで 対極があるからこそ はっきり見える事もあると 考えてみた。
太宰治の作品といえば、主観における緻密かつ流暢な心理描写が魅力である。当作品もその魅力で溢れており、流れるような文章でとても読みやすい。 作品の主人公である妻の理想主義的な考え方には、共感するところもあれば受け容れられないところもあった。短い作品ながらも様々なことを感じさせ、考えさせてくれる良い作品だと感じた。 明るい結末ではないため、そのような作品を探している方にはおすすめしない。
奥さんの気持ち、よく分かります! 結婚するのは この人だ、と分かってしまう直感。唐突に理解してしまうのだから他の人との結婚は毛ほども考えられない。 そして、貧しさの中で片寄せあう事を無上の喜びを噛み締める。 必死で健気に生きている時、あぁ、これが絆って奴かもしれない、なんて思うんですよ。 変わりゆく夫を傍らで、どうしようもない気持ちで見ている奥さん。私も若かりし時を思い出しながら、一緒にどうしようもない気持ちになりました…。
最後の女の執念が太宰的表現で好きです。
太宰の描く女性と駄目な男性にどうしようもなく惹かれる
驚くほど鮮明に、この人がいっている夫のことが浮かぶ 少し極端な気もするが、妻の気持ちはわからなくない
将来の自分がこうなるとしたら、なんて思いながら読みました。 大きな希望を抱きながら、孤高に生きる男性は魅力的でありながら、女は完全に相手を信じることはなく、できれば成功しないでほしいなんて思う。 成功しても、変わらないで居てくれれば、ずっと好きで居られるかもしれない。 でも、環境が変わると、人はどうしても、環境に合わせて変わってしまうのが自然であったりする。成功する前のあなたが好きだった、なんていう話はいくらでもあるけれど、短い文章でこれだけ核心をついてる作品に出会えたのは嬉しいことです。
一気に読み込んでしまいました。 この後を引く読了感たまりません。 この短編はある絵師の奥様の独白調なのですが、テンポといいますか勢いが良くて最後まで話に巻き込み飲み込み、最後にとん、と終わらせる。そして余韻。 さすが太宰、名作と思います。
以前、中村文則氏が大宰のきりぎりすを人間の自意識がテーマの本としておすすめしていた。読んでみて成程と思う。文則さんご自分で分かっていらっしゃるんだな。その後、画家の男はどうしたんだろう。
こうろぎをキリギリスにしてしまう技法は流石太宰です。女言葉、女心、太宰がいかにモテたかよくわかる作品です。
人の求めるものが、自分のそれとは違うものである。夫婦であってもこれまた然り。正しいとか間違いとか、そんな物差しで測るものではない。 誰も、悪くはないのだ。お金が人を変えるのか。