「あの安間をした。みよの事を頭から抜いてした。汚す気にはなれなかった。下男に汚されたのを知られていなくなった。」 世にでてからも 似たような行動パターンなので さもありなんと 窺われる。
津軽という寂しい村に生まれても、家という社会が大きい。 兄弟が多い。兄達がいて姉達がいて弟もいる。下男も女中もいて、書生までいる。 「生まれてきてすみません。」と言った治であるが、決して孤独ではない。 もし、彼が貧乏な家に生まれ兄弟もなく一人子として育てられたら成功していただろうか? 少なくとも、道化を演じる舞台が整っている必要はあるだろう。 才能も必要だが小説の題材となる環境も必要なのです。 女中に恋できる環境?今でいうと? 家政婦、若い家政婦がいる家か? 母の愛がなくとも、愛する対象がいる家か! 後に心中を重ねた彼の複雑な心境が少しわかるような気もする。