「思ひ出」の感想
思ひ出
おもいで
初出:一章「海豹 第一巻第二号」1933(昭和8)年4月1日

太宰治

分量:約77
書き出し:一章黄昏のころ私は叔母と並んで門口に立つてゐた。叔母は誰かをおんぶしてゐるらしく、ねんねこを着て居た。その時の、ほのぐらい街路の靜けさを私は忘れずにゐる。叔母は、てんしさまがお隱れになつたのだ、と私に教へて、生《い》き神樣《がみさま》、と言ひ添へた。いきがみさま、と私も興深げに呟いたやうな氣がする。それから、私は何か不敬なことを言つたらしい。叔母は、そんなことを言ふものでない、お隱れになつたと言へ...
更新日: 2020/11/11
19双之川喜41さんの感想

 「あの安間をした。みよの事を頭から抜いてした。汚す気にはなれなかった。下男に汚されたのを知られていなくなった。」 世にでてからも 似たような行動パターンなので さもありなんと 窺われる。

更新日: 2016/08/13
芦屋のまーちゃんさんの感想

津軽という寂しい村に生まれても、家という社会が大きい。 兄弟が多い。兄達がいて姉達がいて弟もいる。下男も女中もいて、書生までいる。 「生まれてきてすみません。」と言った治であるが、決して孤独ではない。 もし、彼が貧乏な家に生まれ兄弟もなく一人子として育てられたら成功していただろうか? 少なくとも、道化を演じる舞台が整っている必要はあるだろう。 才能も必要だが小説の題材となる環境も必要なのです。 女中に恋できる環境?今でいうと? 家政婦、若い家政婦がいる家か? 母の愛がなくとも、愛する対象がいる家か! 後に心中を重ねた彼の複雑な心境が少しわかるような気もする。