最初の長々とした候文は取っ付きにくく、先を危ぶんだが、口語文になり〈黄村先生〉の名が出た途端、不安が安堵に変わった。ドジで間抜けな漫画のような先生の行状が展開する。読後、再度最初の候文を読み返すとよく理解できる。
黄村先生第三 作。先生今回は、茶道に興味をお示しになり、お茶会を開催。丁寧な招待状を受け取った「私」は、にわか仕込みで、招待に応じるが、先生の茶道に対する解釈は、想像を絶する物であった。重々しい招待状と実際の茶会の対比が絶妙。尚、太宰の妻美和子によると、彼等は、彼女の母の茶会に、菓子酒目当てで出席、終始ゲラゲラ笑い続けて、メチャメチャな茶会になり、後日母より、茶道の本や茶碗、掛け軸等を送られた言うエピソードがあったという。黄村物が、三作のみに止まったのは、遺憾である。