明治大正時代は結婚は親戚知人等の世話等の狭い範囲で行われていた。それでこの本の様に男性を姉妹で譲り合うことになる。個が確立されてない時代だけにこの姉妹の様に余計に込み入った感情に支配される。
姉が 秘かに 想いを寄せていた男は 妹と 新婚生活を 始める。 関西から 夫の出張に同行してきた姉は 俥の小窓から 男を見掛けるけど ためらった末 声をかけずに 去る。 哀感漂うと感じた。
報われないほど、報われないからこそ、愛しく思う。嫉妬は、女に、恋をさせる 。 この気持ちは、きっと、秋のせい。
姉は 密かに 思いを寄せていた従兄弟を 諦めて 関西に住む 平凡な会社員と 結婚してしまう。久しぶりに上京して 従兄弟と結婚した妹と 再会し 帰りがけに 乗って居る人力車の 窓越しに 従兄弟を見かけるけど 躊躇しているうちに 人力車は 通り過ぎてしまう。心情の表現に 並ならぬものがあると感じた。
姉は妹が幸せになってくれればそれで良いと口では入っていたが、内心は複雑であり、改めて好きな人に再会して好きな気持ちは消えていなかったが、もう全て諦めているように感じられた。
日常のちょっとした心のすれ違いが静かにまとめられてます。誰もが持つ感情を文に出来るのが芥川の凄さ。
美しく落ち着いた語り口だが、その底深い悲しみと切なさに心を打たれる。ここまで、女性の心 を描けるとは。やはり、天才芥川。
良かった。古さを感じられませんでした。人はいつの時代も同じことを繰り返しているんですね。
全般に漂う刹那さが良いですね。
儚い気持ちは時代を感じさせず、私の心をも苦しくさせた。ただそもそもただ一人の為に三人の人間がわざわざ不幸な道に立ち入らずともよいのではなかろうかと思われる。
複雑な気持ちが混ざった心が、季節の隠喩とともに緩やかに変化していく点がおもしろかったです。株価変動のグラフを思い出しました。春になると良いですね。
切ない