二つの手紙
ふたつのてがみ
初出:「黒潮」1917(大正6)年9月分量:約32分
書き出し:ある機会で、予《よ》は下《しも》に掲げる二つの手紙を手に入れた。一つは本年二月中旬、もう一つは三月上旬、——警察署長の許へ、郵税|先払《さきばら》いで送られたものである。それをここへ掲げる理由は、手紙自身が説明するであろう。第一の手紙——警察署長|閣下《かっか》、先ず何よりも先に、閣下は私《わたくし》の正気《しょうき》だと云う事を御信じ下さい。これ私があらゆる神聖なものに誓って、保証致します。です...