田山花袋
その頃は 生け垣に 茶の木を 巡らし 焙煎(ばいせん)の 真似事の 新茶 仕立てを 愉しむ 人は 普通に いた。団子状(だんこじょう)に 茶葉が 固まって しまうので それを 解きほぐしながら 長い 時間を かけて 琺瑯(ほうろう)で 仕立てる。また 葉を 飲用の 後に それを つくだ煮状にして 食し 再活用した。ある藩では 有事に そなえて 生け垣に 茶木を 植えることを 奨励することも あった。あの 馥郁たる 香りは 遠い 想い出に 充ちている。