旅日記から
たびにっきから
初出:「渋柿」1920(大正9)年6月~1921(大正10)年4月分量:約64分
書き出し:一シャンハイ四月一日朝のうちには緑色をしていた海がだんだんに黄みを帯びて来ておしまいにはまっ黄色くなってしまった。船の歩みはのろくなった。艫《とも》のほうでは引っ切りなしに測深機を投げて船あしをさぐっている。とうとう船が止まった。推進機でかきまぜた泥水《どろみず》が恐ろしく大きな渦《うず》を作って潮に流されて行く。右舷《うげん》に遠くねずみ色に低い陸地が見える。日本から根気よく船について来た鴎《か...