寺田寅彦
生活の中に感じる自然を断片的に切り取る十七文字になぜ魅力を感じるのだろうか。科学的な自然現象の事実と人間の感情の想起が融合した賜物こそ、俳句と呼ばれている芸術だ。
古人の句には科学的真実をとらえたものがあって、理科教育を受けた今の人のに少ないと思われるのは不思議だ、とある。理系や文系と区分けて科学と文学とを対極にあるかのように考えていた自分が恥ずかしくなる。 この随筆や同著者の「物理学と感覚」を読むと、科学も俳句もあまねく自然を人の感覚で捉え、人の言葉で描写する試みであるのではと思えた。