中島敦の斗南先生は三造とその伯父について書かれたもの。性格の強情は伯父が死んでから、伯父の遺作書を読んで三造はその先見の明に感心する話。
斗南先生の性格や振るまいはすごく分かりやすい。こうゆう人はそこらじゅうにいる。しかし、これに学識と先見性が加わると、たしかに鼻持ちならない頑固者、変人が出来上がるだろう。 人は生きるために仕事をする。そして、遺伝子を残すために結婚(とは限らないが)をする。どちらもしない斗南先生は実際、役立たずな遊民だろう。 中島には実存主義的な傾向がみられるが、斗南先生の場合も、まず実存としての己を意識してから、本質をもとめる苦悩や執着をもち、ある種の諦めの中で漢詩集を残したりという生涯を送ってる。終わりの方で斗南先生の先見性に触れているから、たぶん体験談だと思う。中島敦は好き嫌いは別として斗南先生に共感している(作者だから当たり前か)。 面白かった。