和太郎さんと牛
わたろうさんとうし
初出:「花のき村と盗人たち」少国民文芸選、帝国教育会出版部、1943(昭和18)年9月30日分量:約36分
書き出し:一牛ひきの和太郎さんは、たいへんよい牛をもっていると、みんながいっていました。だが、それはよぼよぼの年とった牛で、おしりの肉がこけて落ちて、あばら骨も数えられるほどでした。そして、から車をひいてさえ、じきに舌を出して、苦しそうにいきをするのでした。「こんな牛の、どこがいいものか、和太はばかだ。こんなにならないまえに、売ってしまって、もっと若い、元気のいいのを買えばよかったんだ」と、次郎左《じろうざ...