人間見下されるのは嫌だが子爵で一高の若様と若い女性から過分の栄誉を受けるのも面映ゆい。その娘が真剣なだけに自分の嘘に居たたまれなくなる。青春だな。
つまらない片意地から己の美しき信仰を泥へと追いやる他なくなった彼が、あまりにも印象深い。 しかし、もしあの場面で「いいえ、違います」等と言ってしまったらしまったで、きっと彼の中でその信仰に泥をかけてしまうことになったであろうことを考えると、きっぱり破り捨てたという結果からして、あれも悪い選択肢ではなかったのかもしれないとつい思いを馳せてしまう。
青年の青臭い感情。勢いよく読めた。偽装すると、バレた時が恥ずかしいと言うこと。
そんな都合のいい偶然は有り得ない、と思いつつ読む「小説」。 朔太郎氏も一高に憧れていたのか! そう言えば、最近、学歴詐称問題が世間を賑わしたが、他人を欺く心理状態を上手く表現している。
みずみずしく、そしてはかない。誰もが1度は経験したようなほろ苦さ、若いってすばらしい。