青猫
あおねこ
初出:薄暮の部屋「詩歌 第七卷第十二號」1917(大正6)年11月号分量:約115分
書き出し:序※私の情緒は、激情《パツシヨン》といふ範疇に屬しない。むしろそれはしづかな靈魂ののすたるぢやであり、かの春の夜に聽く横笛のひびきである。ある人は私の詩を官能的であるといふ。或はさういふものがあるかも知れない。けれども正しい見方はそれに反對する。すべての「官能的なもの」は、決して私の詩のモチーヴでない。それは主音の上にかかる倚音である。もしくは裝飾音である。私は感覺に醉ひ得る人間でない。私の眞に歌...