「藪の中」の感想
藪の中
やぶのなか
初出:「新潮」1922(大正11)年1月

芥川竜之介

分量:約25
書き出し:検非違使《けびいし》に問われたる木樵《きこ》りの物語さようでございます。あの死骸《しがい》を見つけたのは、わたしに違いございません。わたしは今朝《けさ》いつもの通り、裏山の杉を伐《き》りに参りました。すると山陰《やまかげ》の藪《やぶ》の中に、あの死骸があったのでございます。あった処でございますか?それは山科《やましな》の駅路からは、四五町ほど隔たって居りましょう。竹の中に痩《や》せ杉の交《まじ》っ...
更新日: 2022/04/17
cdd6f53e9284さんの感想

多襄丸は、サムライを殺したのは俺だと言い、女房は、自分が夫を殺したのだと言い、サムライは、自分は自害したのだと主張する。 さて、真実は、いったい何処にある、という物語だ。 なるほど、その裏には矜持のためとか、プライドのためとか、誰かを庇うための嘘とかが重複して入り乱れ、何が真実なのか分からないという物語だが、黒澤明の「羅生門」を見る限りは、ラストで一度人間というものに絶望しているのだから、誰かを庇うための嘘というのは、どうも考え難い。 むしろ、ズバリ、誰もが自分の正当性を強烈に主張する物語といってしまった方が相応しいような気がする。 実は、この映画、公開当時、日本では、まったく評価されず、ベストテン内に入ったものの、やっと第5位だった。 ヴェネチア映画祭に日本映画も紹介がてら出品することになったが、適当な作品がなかったので日本的なものが相応しかろうということで出品した結果、思いもかけぬグランプリを射止めてしまった。 しかし、いざ授賞となって、誰よりもいちばん驚いたのが日本だった。 日本では話題にも上がらなかった作品のどこが、海外でそれほど絶賛されたのかわからないのだから。 現在なら、身近にロシアや中国や韓国など格好な暗黒材料があるから容易に分かる。 真実がどうあれ、嘘でも詐欺でもなんでも構わないから嘘をつき通して金をふんだくった挙げ句、さらにネコババするという念の入りようで、とにかくそのたちの悪さは下品なだけに始末に悪い、こんなふうにバレバレなのに開き直って自分の立場を強引に押し通し、なお「自己主張」し続ける愚劣な姿がすぐそこにある。 そして、皮肉なことに、この優れた自己主張を描いた映画「羅生門」を作った日本が、最も自己主張の下手な国であったことが、その後、嘘つきと狡猾と泥棒根性に長けている隣国にまんまとつけこまれて、ばか正直のお人好しが明らかになってしまったというわけ。 やれやれ、処置なしだわな、これじゃあ。 実は、社会人になってすぐの頃、先輩から、この小説を引き合いに出して、あることを教えてもらった。 それは「三面取材」というもの、つまり同じことを最低でも3人から聞けと。 2人じゃ足りない、3人に聞け。 そうすれば、何が事実か見えてくる。 取材には、こういう検証が必要だし、取材源を守ることにもつながる。ひとつのコメントの中に2人分を入れることで、取材源に逃げ道を用意してあげられると。 なるほど、しかし、この三面取材で羅生門の真実にどこまで迫れるかは、保証の限りではありません。 悪しからず

更新日: 2021/01/21
7fcbb497caeeさんの感想

誰かが嘘をついているのかもしれないという気持ち悪さ。思い込みによって歪んでしまった感情。考えさせられる小説だと思った。

更新日: 2020/10/24
19双之川喜41さんの感想

 真相を知りたいという気持ちは 実は とんでもない高望みで 少しだけ 迫ったぐらいで 手打ちをしてしまうことが おおいように 思う。 勘違い▫思い込み▫無意識の嘘▫等で 妨げられることは よくあるからである。

更新日: 2020/07/13
六花亭四号さんの感想

中心人物は夫婦である男女と盗人の男多襄丸の三人。それ以外の語り手は状況説明のために書かれたに過ぎないと思う。 多襄丸は自分が男を殺したと言う。女は自分が男を殺したと言う。男は自分で自分を刺した、自殺したと言う。誰の話もかみ合ってないから、どれが真実かわからないのである。しかしこれは推理小説ではないので、犯人を探すための内容ではないのだろう。 ものごとをはっきりさせていない小説に有名なものとしては夏目漱石の「こころ」がある。あれはだんだんと真実がわかっていく推理小説的手法で書かれているものではあるが、肝心のKが自殺した理由は明らかになっていない。読者の想像に委ねられている。「こころ」とは違うが、「薮の中」もそういう類いのものだろう。 私は男と多襄丸の二人が女をかばい、女の言っていることが真実なのではと思うが、それも違う気もする。真相は薮の中である。

更新日: 2020/05/25
まんまるさんの感想

まさに真相は藪の中!! 面白かった!!

更新日: 2019/05/16
fe84b0a4283bさんの感想

羅生門の原作。 出演していた京マチ子さんがつい先日亡くなったばかり。 人間の業、浅はかなプライド。 芥川龍之介には人の心がガラス越しのようによく見えていたのかもしれません。 子供の頃に読んだ時はおぞましさに震えましたが今の年齢になると何だか納得している自分がこわい。

更新日: 2018/08/29
4f529811abf4さんの感想

いったい誰があの人を殺したのか…

更新日: 2018/03/14
b221989c280cさんの感想

全てが真実に感じてしまった 本当のところは藪の中だが 面白かった

更新日: 2017/11/30
ふみえさんの感想

そして真相は藪の中。 作品は発表された時点で読者に委ねられるものであるが、その自由度の高いところにこの話の愉しさはあるのだろう。 事実はひとつかもしれないが、その消化のしかたは千差万別なのだ。

更新日: 2017/08/10
5513ecbd5454さんの感想

黒澤明の 羅生門 は、この話を非常に上手く映画化している。羅生門 藪の中 が世界に通用する映画を作った。映画のギミックも素晴らしい。

更新日: 2016/12/02
f428b42452a5さんの感想

コンセプトが秀逸。 真実が分からないから面白い、とかそういう一点で語るものじゃない。

更新日: 2016/10/19
喜助さんの感想

真相は藪の中。ということである。 男を殺したのは誰なのか。女はどこへ行ったのか。誰かが嘘をついているのか。誰もが真実をのべているのか。 読後もう一度頭から読み返したくなる作品。

更新日: 2016/10/16
5f1bc64c994dさんの感想

真実への追求は人間の根源的な欲求である。しかし、人間の非合理性は真実を`事実`にまで貶める。 この作品で非合理性はとくに感情という部分で深く表れていると思う。多襄丸の女への欲情から、夫の女の裏切りへの絶望まで様々な感情が証言に滲み出ている。しかし、これらの感情は真実の特定には除去するべきものに他ならず、真実には辿り着けない不可能性への寂しささえも感じられる。 また、この作品には読者もこの事件への参加を促す要素も存在しており、読者独自の視点に寛容なのだが、やはり真実には到底届かない。 人によっては、この真実への不可能性を作者の無責任と断じる者もいるかもしれないが、私個人としては作者はこの不可能性と、`事実`が現実にはありふれていると指摘していると思われる。とくに、最後の霊媒に頼る描写は真実を追い求める科学へのアイロニーにさえ思われる。 この作品が何を伝えたかったのかは、個々の考えに基づくのであり、それを悟るのは不可能であり、私のこれまでの言葉も信用ならない。なぜなら、それもただの陳腐な真実への追求にほかならないからである。 私はこのような考察を与えてくれたこの作品に心から感謝したい。

更新日: 2016/03/15
sakuさんの感想

何が真実かはわからない。 そこが面白い。

更新日: 2015/11/26
8d723c546aa3さんの感想

疲れた満員電車で読んでしまったせいもあるが、すごく難しかった!それもそのはず、真相は神のみぞ知るなのだ。 実はこうなんじゃないか?と勝手にドラマを作るのが楽しい!(笑)私の中では霊のストーリーが真+妻が悪女で、最後に抜いたのは誰なんだよっ!て若干ホラーな真相を推します(笑) 論理パズルと違って、誰が嘘をついててついていないなど決められてないから、こんな楽しみ方もありなんじゃないかと。

更新日: 2015/11/24
パニャンさんの感想

推理を目的とした話ではなく、各人物の感情について考える物語。 なぜ3人は自分に不利な証言をしたのか。 見栄?恥ずかしさ? 謎は残るが、面白い。

更新日: 2015/04/29
2e7d1d1f83fcさんの感想

こんな事、あるあると思いました(^^; なんでそういう事言うのかな?と考えると、その人が大事に思ってることがわかるのかも。

更新日: 2015/04/23
0dd070c32c1bさんの感想

面白かったですよー。