世之助の話
よのすけのはなし
初出:「新小説」1918(大正7)年4月分量:約18分
書き出し:上友だち処でね、一つ承りたい事があるんだが。世之助《よのすけ》何だい。馬鹿に改まつて。友だちそれがさ。今日はふだんとちがつて、君が近々《きんきん》に伊豆の何とか云ふ港から船を出して、女護《によご》ヶ|島《しま》へ渡らうと云ふ、その名残りの酒宴だらう。世之助さうさ。友だちだから、こんな事を云ひ出すのは、何だか一座の興を殺《そ》ぐやうな気がして、太夫《たいふ》の手前も、聊《いささか》恐縮なんだがね。世...