心の王者
こころのおうじゃ
初出:「三田新聞 第四百二十八号」1940(昭和15)年1月25日分量:約6分
書き出し:先日、三田《みた》の、小さい学生さんが二人、私の家に参りました。私は生憎《あいにく》加減が悪くて寝ていたのですが、ちょっとで済む御話でしたら、と断って床から抜け出し、どてらの上に羽織を羽織って、面会いたしました。お二人とも、なかなかに行儀がよろしく、しかもさっさと要談をすまし、たちどころに引上げました。つまり、この新聞に随筆を書けという要談であったわけです。私から見ると、いずれも十六七くらいにしか...