藤村詩抄
とうそんししょう
島崎藤村自選
しまざきとうそんじせん分量:約106分
書き出し:自序若菜集、一葉舟、夏草、落梅集の四卷をまとめて合本の詩集をつくりし時に遂に、新しき詩歌の時は來りぬ。そはうつくしき曙のごとくなりき。あるものは古の預言者の如く叫び、あるものは西の詩人のごとくに呼ばゝり、いづれも明光と新聲と空想とに醉へるがごとくなりき。うらわかき想像は長き眠りより覺めて、民俗の言葉を飾れり。傳説はふたゝびよみがへりぬ。自然はふたゝび新しき色を帶びぬ。明光はまのあたりなる生と死とを...