城ヶ島の春
じょうがしまのはる
初出:「東京朝日新聞」1935(昭和10)年3月分量:約10分
書き出し:城ヶ島といふと、たゞちに北原白秋さんを連想する——といふより白秋さんから、わたしは城ヶ島を知り、恰度酒を飮みはじめた十何年か前のころ、わたしたちは醉ひさへすれば、城ヶ島の雨を合唱したものである。白秋さんが、三崎から小田原へ移つて何年か經ち、恰も、千鳥の唄をつくられて間もないころではなかつたらうか。わたしは白秋さんが、かなりながく住んでをられた小田原の天神山といふ明るい盂宗竹と芝の小山に營まれた木兎...