月夜のでんしんばしら
つきよのでんしんばしら
初出:「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日分量:約11分
書き出し:ある晩、恭一はざうりをはいて、すたすた鉄道線路の横の平らなところをあるいて居《を》りました。たしかにこれは罰金です。おまけにもし汽車がきて、窓から長い棒などが出てゐたら、一ぺんになぐり殺されてしまつたでせう。ところがその晩は、線路見まはりの工夫もこず、窓から棒の出た汽車にもあひませんでした。そのかはり、どうもじつに変てこなものを見たのです。九日の月がそらにかゝつてゐました。そしてうろこ雲が空いつぱ...