かしはばやしの夜
かしわばやしのよる
初出:「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日分量:約20分
書き出し:清作は、さあ日暮れだぞ、日暮れだぞと云《い》ひながら、稗《ひえ》の根もとにせつせと土をかけてゐました。そのときはもう、銅《あかがね》づくりのお日さまが、南の山裾《やますそ》の群青《ぐんじやう》いろをしたとこに落ちて、野はらはへんにさびしくなり、白樺《しらかば》の幹などもなにか粉を噴いてゐるやうでした。いきなり、向ふの柏《かしは》ばやしの方から、まるで調子はづれの途方もない変な声で、「欝金《うこん》...