「牡丹」の感想
牡丹
ぼたん
初出:「改造」1927(昭和2)年1月号

宮本百合子

分量:約32
書き出し:人間の哀れさが、漠然とした感慨となって石川の胸に浮ぶようになった。石川は元来若い時分は乱暴な生活をした男であった。南洋の無人島で密猟をしていたこともある。××町に住むようになって、いろいろな暮しを見ききする間に、偶然なことから或る家族、といっても極く特別な事情の一家と知り合った。××町というのは、東京の西北端から、更に一里半ばかり田舎に引込んだ住宅地の一つであった。××町の入口を貫いて、或る郊外電...
更新日: 2018/03/18
ec538f32331eさんの感想

久々の一気読み。宮本百合子による花を題した小説のひとつ。一見彼女のプロレタリア文学から掛け離れているとおもったが、登場人物は、荒々しい風貌だが誠実で頼れる石川に代表される労働者と非労働者クラスの美しいが非生産的な飯田親子に分けられる。ということは、やはりプロレタリア文学が伏線となっているのか。肉付けで、中長編小説になり得る物語であるが、充実した短編小説である。最後の部分は、鳥肌。