「刻々」の感想
刻々
こくこく
初出:「中央公論」1951(昭和26)年3月号

宮本百合子

分量:約92
書き出し:一朝飯がすんで、雑役が監房の前を雑巾がけしている。駒込署は古い建物で木造なのである。手拭を引さいた細紐を帯がわりにして、縞の着物を尻はし折りにした与太者の雑役が、ズブズブに濡らした雑巾で出来るだけゆっくり鉄格子のこま一つ一つを拭いたりして動いている。夜前、神明町辺の博士の家とかに強盗が入ったのがつかまった。看守と雑役とが途切れ、途切れそのことについて話すのを、留置場じゅうが聞いている。二つの監房に...
更新日: 2015/11/05
a5ac6a3c331fさんの感想

プロレタリア作家として 作家活動をしているとき 三度も検挙されている。 三ヶ月前後に及ぶ留置所での生活が 綴られている。 少ない情報の中からでも 当時の暗い、弾圧された社会状況が よくわかる。 強い精神力、弱者への思いやりが伝わり、家族との葛藤は、痛々しい。 今の 自由に本を読めることに改めて歓びを 感じます。